五か月前くらいにヒッチハイクした話。
はじめに
個人ブログで旅行記などを読んでいると、「ヒッチハイクして人生観変わった!」というような話をよく目にしますよね。
果たして、それは本当なのか?ヒッチハイクはそんなに価値のあるものなんだろうか。
そう思い、自分も試してみることにしました。
去年の9月にちょっとしたヒッチハイクをしてきたので思い出しながら記録していこうと思います。
ヒッチハイクをする。
ヒッチハイクは初めての人にはかなりハードルが高いもののように思えます。
まず第一に、初対面の人と関わり話しかける勇気を持たなければなりません。そして、乗せてくれる車が一向に現れなくても耐える忍耐力も必要なはず。さらに、初めてだとノウハウが全く分からないのでどういうふうに交渉すればいいのか非常に悩みます。
今回の小旅行では事前にヒッチハイクのやり方を調べなかったので、自分もやはり悩みました。行き先を書いた段ボールも持ってないし、場所は普通の市街地だし、おまけに金髪だったし(前回記事で染めました)。「ヒッチハイカーらしさ」が全く出せなくて焦りました。
それでも、わからないなりにやってみるしかないと思いやってみました。路肩の辺りで親指を立てて車を待ちました。👍 が、30分ほどそのまま待っても誰も乗せてくれません。なので作戦変更。信号待ちの車に突撃して一台ずつ乗せてくれと頼むことにしました。かなりの迷惑行為かもしれませんが、この方法だと断られることはあっても「無視される」ということはないはずです。これなら乗せてくれる人が現れるのではないか。
粘ること数十分。ついに、一台目の車に乗れました。
運転していたのは、近くの不動産会社の社員の方でした。物件の鍵を取りに行くために移動していたところだったようです。仕事中の方が乗せてくれるとは思わなかったので、少なからず驚きました。
写真の場所でヒッチハイクを開始しました。
車内では僕の旅の目的地の話などをしつつ、30~40分ほど乗せてもらい、適当なところで降ろしてもらいました。
目的地
一台目に乗ったところまで話しましたが、肝心の旅の行き先を述べていませんでした。
今回は、札幌の自宅から襟裳岬までの旅でした。
地図だと赤ピンの場所に襟裳岬があります。
距離があまり長くないことからもわかると思いますが、冒頭でも言った通りこれは「ちょっとした」ヒッチハイク旅です。目的地近くまで電車も走っていて、実際行きの行程のうち4分の1くらいは電車で移動しました。そして帰りに至っては殆どすべてバス移動です。
金銭的にも地理的にも割と余裕のある旅だったので、ヒッチハイク旅独特の緊張感、ギリギリ感に欠けていたとは思います。ほんとに、お試し程度のヒッチハイクとしか言えません。
それでも、7台の車を乗り継ぎ、当初の目的地までしっかりとたどり着くことのできたこの旅はたくさん得るものがありました。細かく語っていくとキリがないので印象に残った部分だけ記していきます。(と言いつつかなりダラダラ書いてます)
一日目
家を出たのが昼過ぎくらいだったので、日が暮れるまでに襟裳岬に着くのは難しいぞと思い、どこで一泊すべきか考えました。千歳辺りで泊まろうと思いましたが、3台目のおっちゃんに苫小牧まで行くのはどうか、と勧められました。苫小牧に行くと少し遠回りにはなるのだが、襟裳岬方面に向かう車を捕まえやすいらしい。それを聞き、苫小牧で宿泊することにしました。
ネカフェで宿泊する
この旅では生まれて初めてネカフェに泊まることにしました。思ってたよりずっと快適でした。一応シャワー室もあるし軽食も食えるし。何よりマンガ読み放題なのがいい。「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」と「波よ聞いてくれ」をそれぞれ最新刊まで読み耽ってしまいました。一人旅しているという雰囲気も相まってかなり漫画の世界に没頭できました。ありがとうございますやでほんま
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浅野いにおの漫画の空気感すごい好き。絵もうまいし
「波よ聞いてくれ」は札幌が舞台の漫画で親近感あった。「ラジオ」が題材なのも面白い。
二日目
二日目は妥協して電車で移動スタート。でも襟裳岬まで線路が伸びてない(これはもともと知っていた)ので中途半端なところまでしか行けません。鵡川駅というところで降りて、地元の人が行く感じのラーメン屋で腹ごしらえしたあたりで、雨がぱらぱらと降り始めました。雲行きを案じつつ、ヒッチハイクを再開します。
5台目の車は意外とすぐに止まってくれました。運転手はナイスミドルという感じのおっちゃんで、一人車旅の最中だったらしいです。
このおっちゃんがほんとにいい人でした。鵡川から浦河というところまで送ってもらったんですが、これがまずかなりの距離です。彼自身の目的地は浦河よりもっと手前の町だったにもかかわらず、わざわざ遠くまで連れていってくれました。ありがとうございますやでほんま。また、ここら辺は馬が有名とか昆布が有名とか、色々と興味深い話もしてくれました。
浦河に着いたあたりで晴れてきて、青い海がはっきりと見えるようになってきました。
6台目は社会人なりたてぐらいのカップルが乗せてくれました。行き先が同じ襟裳岬で、気軽な感じで「乗っていっていいですよー」と言ってくれました。世間話したり少し黙ったりしている間に時間が過ぎ、いよいよ到着。
襟裳岬に到着
たくさんの人の手を借りつつなんとか目的地に到着することができました。岬からの眺望は普通によかったです。
襟裳岬を見て回っている間、最後にヒッチハイクさせてもらったカップルと何度かすれ違ったのですが、そのたびに何となく気まずい思いをしました。(陰キャ並感)
帰る
風景を満足するまで見て回り、よくわからん昆布アイスクリームを食した辺りで夕方五時くらいになっていました。ここでこれからどうするか迷いました。襟裳岬にもいくつか宿があるので素泊まりするか。先ほど教えてもらったバスに乗って近くの町まで帰ってから宿を探すか。あるいは...。
どうせならここでうまいもん食って明日には日の出も見たい!と思い、襟裳岬のいい感じの宿を探して訪ねてみました。
が。
一番魅力的だと思った宿はもう予約で一杯でした。一応他の宿があるという情報も教えてもらったのですが、なぜか(今思い出してもよくわからないのだが)急速に萎えてきて、宿泊をやめて「一晩中歩けば宿代もかからないし朝には電車駅までたどり着けるだろう」という、とち狂った一人夜のピクニックを考案します。陰キャがこじれるとこんな変なことになります。気を付けましょう。
歩いて帰る
この八つ当たりばったりな計画は今回の旅の一番の失敗でした。最初の方はよかった。きれいな夕日を横目に見ながら輝かしい気持ちで歩きました。太陽に照らされてオレンジ色に光るすすきの間に鹿がたまに現れ、神秘的な雰囲気を醸し出していました。
しかし、日が沈み、夜になってから状況は一変します。
とにかく暗い。道路に沿ってぽつぽつと点在している明かり以外ほとんど何も見えません。想像以上に真っ暗。
そして寒い。9月の北海道です。沁み渡る寒さ。少し前にアイスクリームを食べてしまったのも災いし、冷えから来る腹痛に苦しみました。
暗いし寒いしお腹痛いでほんとにツラかった。というか目的地が35km先という時点で絶望ですよ。はじめは楽観的に歩き始めましたが、進めば進むほど実感する遠さ。GoogleMapを何度見ても目的地に全く近づいていない現実を突きつけられ愕然としました。遠いんだよ順平!
精神的にも肉体的にも限界に達し、ここまでかと思った時に目の前に光が広がりました。
セイコーマートです。北海道にしかないコンビニ、セイコーマートの灯りが見えました。このセイコーマートにどれだけ救われたか。トイレを借り、フライドチキンを食い、少し休んで疲労回復してから、また歩き始めました。湧き水を飲んだメロスのような気分でした。
闇に怯える
コンビニを出て数十分歩くと町という感じもなくなり、海沿いの道路に人気のない家屋がぽつぽつと建っていました。
依然として目的地は遠く、体力や足はもつのだろうかと不安になってくる。
しかし、なによりも予想外だったのは、夜が思った以上に怖いということでした。生まれてこのかた街にしか住んだことがなく、今まで本当に真っ暗な夜というものを体験したことがなかったのです。
真っ暗な道を一人で歩くというのがこれほどつらいこととは思いませんでした。ちょっと先に何があるのかわからない。道路端を歩いていてもどこに溝があるか把握できないほどです。
さらには、何が「いる」のかわからないという怖さもあります。変な物音がするなと思ったらちょっと近くにシカがいたりしてかなり驚いたりもしました。夕方は微笑ましい存在だったシカが闇夜では僕を脅かす存在となっていました。まあ、シカだけならまだいいのですが、もしかすると熊とかがすぐ近くにいて自分を狙っているかもしれない。そんな想像をするだけで、足がすくみました。
ただのチキン野郎の妄想、と言ってしまえばそれまでなのですが…。実際にあんな夜道を歩いてみるとかなりメンタルをやられる気がします。暗闇というものは人の意気を消沈させ、生物として根源的な恐怖を呼び覚ますような性質がある気がします。今回それを身をもって体感しました。
そんなこんなで、魂がいよいよ限界に近づき、僕は目的地まで歩くのはもう諦めていました。綺麗な星空の下へろへろになりながら、ごく稀に通る車に乗せてもらおうと、親指を立てたり傘を振って存在を必死にアピールしていました。が、暗すぎて歩行者がいるのに気づかないのか、僕が怪しすぎるのか一台も止まってくれません。
なんとか海辺の小さい集落にたどり着き、野宿でもしてしまうつもりでその場にしゃがみこんだ時に、救いの手が差し伸べられました。
一度は通り過ぎた車が引き返して僕を拾いに来てくれたのです。運転していたおばさんはとてもやさしい方で、変な時間に変な場所にいる放浪者に異変を感じたのか、Uターンしてきて快く車に乗せてくれました。
後部座席にはベビーシートに座った子供がふたり。カーステレオでは知らないJポップがかかっていました。僕が宿泊する場所もまだ決まっていないと言うと、近くの町(浦河・静内など)の宿を調べてくれて、素泊まりでも今から泊まれるのか電話したり直接ホテルに訪れて聞いたりしてくれました。めちゃくちゃ親切。感謝してもしきれない。
そして更には浦河から札幌まで一本で走るバスがあるということを教えてもらい、どこから乗れるのかといった詳細な情報まで詳しく知ることができました。何から何までお世話になってしまいました。人の温かさ、ありがたみというのはまさにこういうことなんですね。
そうして、おばさんのおかげで浦河のちょっと安めのホテルにチェックインすることができました。ホテルのカウンターでおばさんとはお別れし、その日はぐっすり眠りました。
三日目
昼前までゆっくりと休んでからホテルを出てバス停に向かいました。バスに乗る前に軽食を買いに近くのコンビニに寄ったのですが、偶然昨日のおばさんにばったり会いました。お互いに驚きましたが、昨日のお礼を述べてまた別れました。
その後は予定通りバスに乗り、旅の内容を思い返しながら帰途につきました。
感想
ヒッチハイクそのものの大変さ、移動手段としての車の偉大さ、セイコーマートのありがたさ、夜の闇の恐ろしさ、人の温情・・・
今回の旅は、短いものではありましたが、非常に多くのことを学びました。
ここで、記事冒頭の問いに戻ってみようと思います。
「ヒッチハイクで人生は変わるのだろうか?」。
正直言うとその答えは今もわかりません。僕の場合は人生観が変わるほどのすごいことは起こりませんでした。他の人がどうなのかは想像もできない。
ただし一つ確かなのは、ヒッチハイクはやってみるだけの価値はありました。
以上です。ここまで読んでくださりありがとうございました。